病院から『退院できますね』と言われても、
家族としては“そこからどうやって帰るの?”と不安になることがあります。
転院・退院が決まると、
- 書類の準備
- 荷物整理
- 今後の生活準備
など、やることが一気に増えます。
その中で、意外と大きな負担になりやすいのが、
どうやって安全に移動するか
という問題です。
特に退院時は、
- 車に乗せられるのか
- 家の中まで入れるのか
- ベッドへ移れるのか
など、不安を感じるご家族も少なくありません。
実際には、状態や介助経験によって、移動の難しさは大きく変わります。
今回は、転院・退院時に家族だけで対応しやすいケースや、負担が大きくなりやすいケースについて、現場視点も交えながら解説します。

家族だけで対応しやすいケース
まず、すべての転院・退院で福祉ハイヤー(介護タクシー)が必要になるわけではありません。
例えば、以下のようなケースでは、家族だけで対応できる場合もあります。
- 自力で普通車に乗り降りできる
- 状態が安定している
- 短距離移動
- 家族に介助経験がある
- 普段から自家用車移動をしている
特に、介助に慣れているご家族がいる場合は、比較的スムーズに対応できることもあります。
ただし、同じ状態でも、
- 家族人数
- 介助経験
- 体格差
- 腰痛の有無
- 季節や天候
などによって、負担感はかなり変わります。
家族だけでは大変になりやすいケース
一方で、以下のようなケースでは、移動負担が大きくなりやすくなります。
- 車いすを使用している
- ストレッチャーが必要
- 寝たきり状態
- 麻痺がある
- 酸素を使用している
- 点滴中
- 強いふらつきがある
- 長距離移動
- 冬道での移動
- 家族が介助未経験
特に「普通車への乗り移り」が難しい場合は、家族介助の負担が急に大きくなります。
普通車へ乗るには、
- 立ち上がる
- 身体を回転させる
- シートへ座る
- 足を車内へ入れる
という動作が必要です。
実際、普通乗用車に乗り込むときは、意外と浅座りとなりやすく、ずり落ちそうになることも少なくありません。
また、少し支えれば歩ける方でも、タイミングが合わなかったり、支え方がわからなかったりすると、転倒につながることがあります。

「歩ける」だけでは安全とは限りません
ここは、転院・退院時によく誤解されやすいポイントです。
実際の現場では、
「歩ける」=「安全に移動できる」
とは限りません。
例えば、少し支えれば歩ける状態でも、介助に慣れていない場合は、
- 身体を引っ張ってしまう
- 支える位置がわからない
- タイミングが合わない
- 転倒しかける
- 家族が腰を痛める
などが起こることがあります。
逆に、介護経験のあるご家族であれば、同じ状態でも安全に対応できることもあります。
つまり重要なのは、
「本人の状態」だけでなく、「介助する側の状況」
でもあるのです。
📝 実際にあったケース
以前、ご家族付き添いのもと、自宅退院されたお客様をお送りしたことがありました。
ご自宅の玄関までお連れし、「ここからは大丈夫です」と娘様がおっしゃられたため、私はお会計を済ませて失礼しようとしていました。
するとその直後、後ろから「ガタッ」と倒れる音が聞こえました。
振り返ると、後ろ向きでお母様を支えながら歩いていた娘様が廊下で転倒し、その上にお客様も一緒に倒れてしまっていました。

幸い、お二人とも大きなけがはありませんでしたが、娘様だけでは起き上がらせることが難しく、その後は私が介助してベッドまでお連れしました。
少し支えれば歩ける状態だったとしても、病院のリハビリで歩けていたからといって、自宅でも同じように歩けるとは限りません。また、介助のタイミングや体の支え方は、意外と難しいものです。
特に転院・退院直後は、ご本人もご家族も疲れていることが多く、「頑張ればできる」と思っていた場面で、思わぬ転倒につながることもあります。
今回のケースでは、上靴を履いて滑りにくい状態で歩行訓練していた病院と、フローリングの廊下という環境で靴下を履いたまま歩こうとして滑ってしまった差を意識しなかったことが要因の一つと考えられます。
もちろん、娘様が悪かったわけではありません。
退院直後は、ご本人の状態変化や自宅環境の違いもあり、慣れていないと予想以上に難しいことがあります。
退院時は「家の中」が本番です
病院から病院への転院や、病院から施設への移動では、病院スタッフや施設スタッフがいるため、比較的スムーズです。
しかし、実際に大変になりやすいのは、
「病院から自宅への退院」
です。
なぜなら、自宅には介助スタッフがいないからです。
実際には、
- 玄関段差
- 狭い廊下
- ベッド移乗
- 靴の履き替え
- 着替え
- トイレ導線
など、”生活再開”の問題が一気に出てきます。
病院や施設であればスタッフが介助を引き継げますが、自宅では家族だけになるケースも多く、移動や介助の負担が一気に大きくなります。
「家に着く」ことと、「家で過ごせる状態になる」ことは別の場合があります。
車から降りる → 玄関を越える → ベッドへ移る → 着替える。
ここで初めて「帰宅」が完了するのです。
これは、退院支援の現場でも非常に重要なポイントです。
冬場の転院・退院はさらに負担が大きくなります
北海道・函館エリアの冬場は、病院の外へ出た瞬間に寒さや路面状況の問題が出てきます。
例えば、
- 雪で車いすが重くなる
- 路面が滑りやすい
- 玄関前が凍結している
- 寒さで身体がこわばる
など、病院の外へ出た瞬間に難易度が上がることがあります。
実際の現場では、毛布で全身を覆って移動することもあります。
特に車いす介助は、雪の抵抗で想像以上に力が必要になることも少なくありません。
福祉ハイヤーという選択肢
こうした時に、選択肢のひとつになるのが、福祉ハイヤーです。
福祉ハイヤーでは、
- 車いすのまま乗車
- ストレッチャー搬送
- 自宅内までの介助
- 医療機器使用時の相談
- 冬場の移動対応
など、状態に合わせた移動方法を選ぶことができます。
また、退院時には必要に応じて、家のベッドまで安全に移動できるよう、お手伝いすることがあります。
実際には、
「退院時の移動が大変だったので、次回通院はお願いしたい」
というご相談を、ケアマネジャーさんや病院相談員さん経由でいただくこともあります。

無理をしない移動方法も大切です
転院・退院では、
「家族だけで頑張らなきゃ」
と思われる方も多くいます。
ですが、無理な介助は、
- 転倒
- 腰痛
- 本人の疲労
- 冬場の事故
につながることもあります。
だからこそ、
「状態に合った方法を選ぶ」
ことが大切です。
家族だけで対応できるケースもあれば、サポートを使った方が安心なケースもあります。
「これ、自家用車で大丈夫かな?」
「家の中まで介助できるかな?」
状態やご自宅環境によって移動方法は変わるため、迷った時は早めに相談しておくと安心です。







コメント